裏側矯正と食事の話。食べにくいもの、食べれないものはある?

歯列の裏側にブラケットとワイヤーを装着する裏側矯正は、装置がまったく見えないことから審美性を重視する人に向いています。唾液による自浄作用が働きやすく、表側矯正よりも虫歯になりにくいというメリットも伴いますが、食事に関しては不安に感じる人も多いようです。

そこで今回は、裏側矯正で食べにくいもの・食べられないものについて、名古屋市の星ヶ丘矯正歯科が詳しく解説します。

裏側矯正の治療中に食事制限はある?

裏側矯正は標準的なワイヤー矯正(=表側矯正)とほぼ同じ装置を使用します。固定式である点も共通しており、食事にはある程度の制限がかかります。

裏側矯正で食べにくいもの

装置に引っ掛かりやすい食べ物

ブラケットとワイヤーで構成された装置は、とても複雑な構造を採っています。食品の形や性状(性質と状態)によっては引っ掛かりやすく、食べにくいと感じることでしょう。具体的には、蕎麦やラーメン、パスタなどの麺類は、裏側矯正で食べにくいものとして挙げられます。ほうれん草やねぎ、もやしといった繊維質の多い野菜も装置に引っ掛かりやすく、食べにくいと感じることが多いです。繊維質の多い食べ物は、一度装置に引っ掛かるとなかなか取れなくなるため、強いストレスも受けます。

粘着性の高い食べ物

ネバネバとした粘着性の高い食べ物は、裏側矯正中に食べにくいと感じます。“ネバネバ”と言っても納豆やおくら、山芋で糸を引くような感じではなく、キャラメルやおもち、ガムなどの強い粘着性を示す食べ物を指します。これらは装置に粘着してしまうため、食塊を形成するのが難しいです。頑張って舌で剥がそうとしても、そう簡単には取り除けません。装置に引っ掛かりやすい食べ物と同様、裏側矯正中に食べられないわけではありませんが、食べにくいことに間違いはありません。おそらく、多くの人は食べるのを自主的に控えるようになることでしょう。

裏側矯正で食べられないもの

極端に硬い食べ物

裏側矯正では、極端に硬い食べ物は基本的に食べられないと言えます。例えば、おせんべいやフランスパン、ナッツ類は、相当強い力で噛まなければ咀嚼できませんよね。それだけ強い咬合圧(=噛む力)が発生すると、歯列の裏側に設置された装置は容易に外れてしまいます。装置に当たらないよう、上手く噛むことでトラブルは防げますが、それを毎回の食事で常に行うことは不可能に近いです。矯正装置が外れると、その分、治療期間も延びてしまうことから、極端に硬い食べ物は原則として食べられないと考えておいた方が良いです。

裏側矯正で噛みにくい場合の食べ方のコツ

裏側矯正は、表側矯正よりも食べ物を噛みにくい・食べにくいと感じる場面がやや多くなっています。それは咀嚼の現場となる固有口腔(=歯列の内側の空間)に装置が設置されているからです。そんな裏側矯正でもちょっとした工夫を加えることで、食べ物を噛みやすくなります。

食べ物を細かく切っておく

麺類や繊維質の多い食べ物は、あらかじめ細かく切っておくことで噛みやすくなります。装置に引っ掛かることも少なく、スムーズに飲み込むことができます。細かく切ると食品の食感が楽しめなくなるかもしれませんが、そこは我慢です。最も重要なのは、裏側矯正を成功させることです。ただ、麺類や繊維質の多い食べ物を完全に断つ必要はなく、ひと手間加えることで、裏側矯正中でもいろいろなバリエーションの料理を食べられるようになります。

食べ物は奥歯で咀嚼する

裏側矯正の装置は、前歯部が食べ物と接触しやすい構造となっています。食べ物を前歯で噛み切る際に、装置への負担は最大となるため、できるだけ奥歯で噛むよう努めましょう。上述した「食べ物を細かく切っておく」という対処は、前歯で噛み切る必要性をなくすことにもつながります。

もちろん、奥歯にもブラケットやワイヤーは設置されているので、噛む位置には工夫がいります。専門的には咬合面(こうごうめん)と呼ばれる、奥歯の平らな部分で食べ物を捉え、装置に干渉しないように咀嚼しましょう。これは裏側矯正中に食事をしていく中で掴めるコツといえます。

食べ物は少しずつ口に入れる

食べ物は一度にたくさんの量を頬張るほど、美味しさを感じやすいものです。その感覚はよく理解できます。けれども、裏側矯正中にそれをやると、装置に過剰な負担がかかってブラケットやワイヤーの脱離を招いてしまいます。奥歯を主体にして咀嚼するという対処法も実践が難しくなることでしょう。ですから、裏側矯正中は、無理なく咀嚼できる範囲で、食べ物を少しずつ口に入れることが重要となります。はじめは食事による満足感が得られにくくなるかもしれませんが、すぐに慣れるはずです。

矯正治療のバイトアップについて

裏側矯正で食事制限がかかる主な原因は、前歯部の装置です。前歯の裏側の装置というのは、位置関係上、外れやすくなっているのです。とくに噛み合わせが深い過蓋咬合(かがいこうごう)のケースでは、上の前歯の装置が下の前歯に噛みこんでしまうため、食べ物を咀嚼しにくいだけでなく、装置の脱離も招きやすいです。そうした症例では「バイトアップ」と呼ばれる処置を行うことがあります。

バイトアップとは?

バイトアップとは噛み合わせを高くする処置です。奥歯に歯科用セメントやレジンを盛り足して、歯を高くします。その結果、前歯の接触が少なくなり、装置の脱離を防止できます。バイトアップ中は食事の時の違和感、噛みにくさが強くなりますが、1~2週間で慣れる人がほとんどなので、それほど心配する必要はありません。ちなみに、バイトアップをする期間はケースによって異なり、短ければ2~3ヵ月、長い場合は1年前後となっています。

まとめ

今回は、裏側矯正中に食べにくいもの、食べられないものについて、名古屋市の星ヶ丘矯正歯科が解説しました。裏側矯正中は、長い食べ物や粘着性の高い食べ物は食べにくく、極端に硬い食べ物は装置を損傷させる恐れがあるため、できるだけ控えた方が良いと言えます。そんな裏側矯正中の食事についてもっと知りたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。当院は、裏側矯正の実績豊富な歯科医院です。

著者プロフィール
矯正歯科医師:亀山威一郎

星ヶ丘DC矯正歯科:医院長・愛知学院大学歯学部非常勤講師 ・日本矯正歯科学会 認定医 ・ヨーロッパ舌側矯正歯科学会 専門医 ・世界舌側矯正歯科学会 認定医 小学生のとき矯正治療をするも、保定装置を使わなかったため後戻りし中学生で再治療を経験。そんな子供時代を過ごしながら歯科医師を志す。過去を振り返ったときにあのときに矯正してよかったと思える治療を目ざしています。

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