裏側矯正すると滑舌が悪くなる?慣れるまでの期間とトレーニングについて

歯列の裏側に装置を設置する「裏側矯正」は、標準的な表側矯正よりも審美性に優れています。

装置が目立ちにくい、お口の粘膜を傷めにくい、歯の動きを確認しやすいなどのメリットがありますが、ブラケットが設置される位置の関係から「滑舌が悪くなるのでは?」と心配される方も多いです。

そこで今回は、裏側矯正による滑舌・発音の影響や慣れるまでの期間、悪くなった滑舌を良くするためのトレーニング方法をわかりやすく解説します。

裏側矯正すると滑舌が悪くなる?

サ行・タ行・ナ行・ラ行は発音しにくい

裏側矯正は、表側矯正やマウスピース型矯正と比較すると滑舌が悪くなりやすいです。これは、私たちが発音する時の舌の動きに関係しています。

具体的には、サ行・タ行・ナ行・ラ行の言葉を発音する際には、舌が上の前歯の裏側に接する必要があります。そこにブラケットやワイヤーが存在していると、舌の動きが制限されてしまい、発音・滑舌が悪くなってしまうのです。

その他の言葉に関しては、裏側矯正で発音・滑舌が悪くなるようなことは、ほとんどありません。

裏側矯正に慣れるまでの期間

1~2週間で慣れる

裏側矯正による発音障害は、慣れるまでにそれほど長い期間はかかりません。もちろん、“しゃべりにくい”という感覚には個人差があり、慣れるまでの期間に大きな差が見られますが、1ヶ月経っても日常生活に支障をきたすほどの発音障害が続くことはまずありません。

しかも、当院の裏側矯正では、できるだけ舌の動きを制限しないよう、さまざまな点に配慮しております。その結果、1~2週間で装置に慣れる方が極めて多いです。

滑舌への配慮

当院の裏側矯正では、以下の点に配慮して、滑舌が悪くなるのを防いでいます。

  • 装置をつけるタイミングを調節する
  • 装置を着ける位置を工夫する
  • 装置にカバーを被せて刺激を少なくする
  • 小型の装置を選択して負担を減らす

こうすることで、一般的な裏側矯正よりも慣れるまでにかかる期間が短縮されます。

滑舌をよくするトレーニング

裏側矯正による発音障害は、歯科医師の配慮によって軽減したり、時間と共に慣れたりしますが、その影響をゼロにすることはなかなか難しいです。極めて狭い「口腔」という空間に、ブラケットやワイヤーなどの大型の装置が存在しているのですから、喋りにくいと感じてしまうのはある程度、仕方がありません。

ただし、トレーニングすることによって、滑舌をより良くすることは可能です。

母音だけで発声する(母音法)

母音である「あいうえお」は、発音の主軸を担っています。これが正確に発音できていないと、「滑舌が悪い」「聞き取りづらい」と感じられます。

ですからまずは、母音をしっかり発音する練習・トレーニングを行いましょう。専門的には「母音法」と呼ばれるもので、子音もすべて母音で発音することで、言葉が明瞭になってきます。

これは、呼吸法が胸式から複式に変わることに加え、一音一音区切ってはっきり発音することから、言葉の切れが良くなるからです。皆さんも具体例を参考にして、一度練習してみてください。

具体例: ありがとう ⇒ あいあおう

舌をトレーニングする

裏側矯正によって悪くなった滑舌は、舌をトレーニングすることでも改善できます。皆さんもご存知のように、舌は筋肉の塊のような器官です。手足の筋肉と同様、トレーニングすればより効率良く運動させることができます。

舌を出す練習

舌を天井に向かって大きく突き出したり、左右に振ったりすることで、舌の筋肉は鍛えられます。「あいうべ体操」と呼ばれるトレーニング法であれば、お口周りの筋肉まで鍛えることができるので、裏側矯正をしている人にもおすすめです。

ちなみに、あいうべ体操というのは、以下の手順で行います。

  • ①    「あー」と口を大きく開く
  • ②    「いー」と口を大きく横に広げる
  • ③    「うー」と口を強く前に突き出す
  • ④    「べー」と舌を突き出して下に垂らす

これを1日30セット行うと、舌筋や口腔周囲筋が鍛えられ、滑舌も良くなります。少々コツが必要となるトレーニング法ですので、詳しく知りたい方は当院までお気軽にご相談ください。

早口言葉を練習する

とても直接的なトレーニング方法ですが、早口言葉を練習することでも裏側矯正による発音障害は改善できます。早口言葉なら遊びも含んでいるので続けやすい方も多いかと思います。

裏側矯正にはメリットもたくさん!

裏側矯正を開始した当初は、「喋りにくい」「滑舌が悪くなった」といったマイナスな印象を持たれやすいですが、それを補って余りあるほどのメリットがある点もお伝えしておきたいです。

最も審美性に優れた矯正装置

見た目の良い装置といえば、マウスピース型矯正を思い浮かべるかと思いますが、実は裏側矯正の方が審美性に優れているといえます。なぜなら、裏側矯正は、正面から見る限り装置が一切目につかないからです。

心理的ストレスが少ない

審美性に優れたマウスピース型矯正でも、やはり至近距離で見たら装置の存在がわかりますが、裏側矯正に気付く人はまずいないでしょう。大切なイベントの際にも装置を気にする必要がなく、心理的ストレスも軽くなります。

矯正装置による外傷が少ない

表側矯正はブラケットやワイヤーがお口の粘膜を傷つけてしまうことがよくあります。裏側矯正では、装置の位置関係上そのような外傷が起こりにくくなっています。

歯の動きを確認しやすい

矯正装置が表側にあると、歯の移動を実感しにくいかと思いますが、裏側矯正なら一目瞭然です。日々少しずつ変わっていく歯列の状態を患者さまご自身が実感しやすくなります。これもまた裏側矯正ならではのメリット・特長といえます。

まとめ

このように、裏側矯正には滑舌が悪くなる発音障害がつきものですが、慣れるまでにそれほど長い期間はかかりません。

また、今回ご紹介したようなトレーニングを実践することで、発音のしにくさも徐々に改善されていくことでしょう。

そんな裏側矯正に関心がある方は、名古屋市の星ヶ丘DC矯正歯科までお気軽ご相談ください。院長は裏側矯正のプロフェッショナルであり、裏側矯正だけで250症例以上の診療実績があります。

著者プロフィール
矯正歯科医師:亀山威一郎

星ヶ丘DC矯正歯科:医院長・愛知学院大学歯学部非常勤講師 ・日本矯正歯科学会 認定医 ・ヨーロッパ舌側矯正歯科学会 専門医 ・世界舌側矯正歯科学会 認定医 小学生のとき矯正治療をするも、保定装置を使わなかったため後戻りし中学生で再治療を経験。そんな子供時代を過ごしながら歯科医師を志す。過去を振り返ったときにあのときに矯正してよかったと思える治療を目ざしています。

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