裏側矯正できない症例、できないケース、できない人とは?

矯正の中で最も目立たない装置は「裏側矯正」です。一見すると透明な装置を使うマウスピース矯正の方が目立ちにくそうですが、やはり近くで見ると治療中であることがわかってしまうものです。

その点、裏側矯正は装置が“見えない”といっても過言ではなく、審美性に重きを置く人からの需要は今も昔も変わりません。ただ、裏側矯正の場合は治療できないと診断されるケースも珍しくないのです。今回はそんな裏側矯正できない症例やできない人について詳しく解説します。

裏側矯正できない3つの症例

裏側矯正は、歯列の裏側にブラケットやワイヤーを装着する治療法なので、専門性が極めて高いと言えます。高度なテクニックを要し、対応できる歯科医院も一部に限られるため、適応症の幅も狭いように思われがちですが、基本的には表側矯正と同じです。表側矯正ができるなら裏側矯正もできる。そう考えていただいて問題ないのですが、以下のようにいくつか例外があります。

舌が標準よりも極端に大きい

表側矯正を行う際には、舌の大きさに配慮する場面はほとんどありません。なぜなら、ブラケットやワイヤーが歯列の外側に設置されるため、舌が大きくても邪魔になることはないからです。

一方、歯列の内側に装置が設置される裏側矯正では、舌が標準よりも極端に大きい場合は、治療の邪魔になります。スペースが不足しているにもかかわらず、無理やり裏側矯正の装置を装着すると、会話や食事の際に舌を噛むことが多くなります。それは患者にとって非常に大きなストレスになるだけでなく、矯正の進行を妨げる要因にもなり得るでしょう。

極端な過蓋咬合(かがいこうごう)

噛み合わせが深い状態である過蓋咬合では、裏側矯正で治療できないことがあります。これは上下の歯で噛むたびに、歯列の裏側に設置した装置が前歯部でぶつかり合ってしまうからです。過蓋咬合の程度によっても治療の可否は変わってきますが、重症例においては裏側矯正を適応することが不可能となります。

ただし、片方の顎から治療を始めるなど、手順や計画に工夫を凝らせば対応できることもあります。その点は歯科医師との相談ということになります。裏側矯正の診療実績が豊富な歯科医師ほど、上手な解決方法を持っているものです。

歯並びの乱れが極めて大きい

歯並びの乱れが極めて大きく、そもそも表側矯正も含めた歯列矯正では対応できないようなケースは裏側矯正も適応できません。最もわかりやすいのは骨格的な異常が原因となって出っ歯や受け口などになっているケースです。これらはまず外科矯正によって顎の骨を切除するなどの処置が必要となります。

ただ、外科矯正だけで歯並び・噛み合わせをきれいに仕上げることはできませんので、その前後で歯列矯正を行うことになります。ですから、歯並びの乱れが極めて大きい症例でも、外科矯正と裏側矯正を併用して治療を進めるパターンはあります。

裏側矯正できないこんなケース、こんな人

上述した「裏側矯正できない症例」は、患者ご自身のお口の中の症状に関連していましたが、歯科医師もしくは歯科医院側に裏側矯正できない理由があるケースも存在します。

歯科医師の技術・経験が乏しい

「裏側矯正は難しいけれど、表側矯正ならできる」と言われた場合は、歯科医師側に問題があることが多いです。なぜなら、裏側矯正と表側矯正の適応症には大きな違いがないからです。表側矯正で治療できるものは、基本的に裏側矯正でも治せます。

その際、歯科医師側から「私の技術・経験ではこの症例は難しいので表側矯正にするか、経験が豊富なドクターを紹介しましょうか?」と説明してもらえたらわかりやすいですよね。ただ、歯科医師も人間なのでそれをありのまま伝えることが難しいこともあり、不要な誤解を与えてしまうのでしょう。

裏側矯正のデメリット・注意点が受け入れられない

これは患者側の問題となりますが、裏側矯正に付随する注意事項やデメリットを受け入れられない場合は、当然ですが裏側矯正できないと言われることでしょう。

具体的には、歯磨きしにくい、慣れるまでの違和感が大きい、特定の行が発音しにくいといった注意点を了承いただけない場合は、表側矯正などその他の矯正法を提案されることかと思います。また、裏側矯正は表側矯正よりも費用がやや高くなる点にも注意が必要です。

裏側矯正できない場合の治療法

裏側矯正できないと言われた場合は、ケースによって代替案が変わります。まず、歯科医師の技術不足で裏側矯正できない場合は、表側矯正かマウスピース型矯正で行うのが一般的です。この2つは裏側矯正ほど難易度の高い矯正法ではないため、多くの歯科医師が対応可能です。

次に、歯並びの乱れが大きく、歯列矯正では対応できないケースでは、骨切りなどを行う外科矯正を併用することになります。極端な過蓋咬合の場合は、上述したように片側から治療を行うことで、前歯部の装置がぶつかるトラブルを回避できますが、表側矯正を選択することでスムーズ治療を進められます。

舌が標準よりも極端に大きい場合も表側矯正やマウスピース型矯正で問題なく歯並びをきれいにできます。ですから、裏側矯正できないと言われた場合は、その理由について詳しく説明してもらうことが重要です。

そういう意味でやはり矯正治療は、カウンセリングや治療説明をていねいに行ってくれる歯科医師に任せるべきです。数年間お付き合いする間柄となりますので、何でも気兼ねなく質問でき、わかりやすく説明してくれる歯科医師を探すことをおすすめします。

まとめ

今回は、「裏側矯正できないケース、できない人」について解説しました。基本的な考え方として表側矯正できるケースは裏側矯正もできますが、現実的に適応できるかどうかは歯科医師の技術・経験に左右されます。

ですから、「あなたの出っ歯は裏側矯正できないです」と言われた場合は、技術力のある歯科医師なら治療できるのかどうかを確認した方が良いといえます。

もしくは、裏側矯正が得意な歯科医院・歯科医師にセカンドオピニオンを求めるようにしましょう。名古屋市の星ヶ丘矯正歯科のような裏側矯正のプロフェッショナルがいる歯科医院なら、裏側矯正をできる症例なのかどうかを正確に診断することができます。

著者プロフィール
矯正歯科医師:亀山威一郎

星ヶ丘DC矯正歯科:医院長・愛知学院大学歯学部非常勤講師 ・日本矯正歯科学会 認定医 ・ヨーロッパ舌側矯正歯科学会 専門医 ・世界舌側矯正歯科学会 認定医 小学生のとき矯正治療をするも、保定装置を使わなかったため後戻りし中学生で再治療を経験。そんな子供時代を過ごしながら歯科医師を志す。過去を振り返ったときにあのときに矯正してよかったと思える治療を目ざしています。

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